2024/05/05
本日は脂質異常症についてまとめております。皆様の参考になれば幸いです。
【脂質異常症とは】
血液中の脂質の値が基準値から外れた状態を、脂質異常症といいます。脂質の異常には、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)、HDLコレステロール(善玉コレステロール)、トリグリセライド(中性脂肪)の血中濃度の異常があります。これらはいずれも、動脈硬化の促進と関連します。
【脂質異常症の診断基準】〈図1〉
脂質異常症の診断基準は、“将来、動脈硬化性疾患、特に心血管疾患、脳梗塞の発症リスクを高める危険性の高い脂質レベル”として設定されています。しかし、この基準値はあくまでスクリーニングのためのもので、薬物療法の開始については、患者さんそれぞれの年齢、他疾患の合併などを考慮し行われる必要があります。
【動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症治療の意義】
・高LDLコレステロール血症(悪玉コレステロール高値)では、コレステロールが血管壁に蓄積され、粥状動脈硬化を発症・進展させます。
・HDLコレステロール(善玉コレステロール)は血管壁に蓄積した過剰なコレステロールを取り出す作用があるため、この値が低下すると、動脈硬化が進展します。
・高LDLコレステロール、高トリグリセライド、低HDLコレステロールの状態が続くと、血管壁に余分な脂が沈着し、プラーク(粥腫)と呼ばれる塊が作られます。プラークは破れやすく、破れたプラークを補修するために血症板が集まってきますが、このプラークや血小板の塊で、動脈を塞いでしまうと血液はその先に流れなくなり、血流の途絶え組織や臓器は壊死します。脳動脈が詰まれば脳梗塞、心臓の冠動脈が詰まれば心筋梗塞を発症しますが、このときに初めて症状として自覚することも少なくありません。
【発症メカニズム】
脂質異常症の原因は、食生活、運動不足、肥満、遺伝などさまざまです。生活習慣病の一つと考えられています。
具体的には、食習慣の欧米化、運動不足による代謝の低下、肥満、喫煙など生活習慣の乱れが関与している事が多いです。一部の方では遺伝的に、LDLコレステロールを取り込む受容体の異常や、中性脂肪を分解する酵素の欠損を認めることもあります。
【治療の進め方】
個々の患者様の背景(性別、年齢、危険因子の数)は大きく異なり、動脈硬化性疾患の発症リスクが高い場合には積極的に治療を行い、リスクの低い場合には必要以上の治療を行わないためにも、医療機関で個々のリスクを評価したうえで脂質管理目標を定めることが重要です。
食事療法、運動療法、禁煙を中心とした生活習慣の改善をベースに、脂質の管理状況、併存疾患などを加味して薬物療法を併用するかを検討します。
【日常生活のアドバイス】
〈食事療法の実際〉
・過食を抑え、適正体重を維持する。(年齢によって異なりますが、BMI 18.5〜24.9を目標とします)
・肉の脂身、動物脂(牛脂、ラード、バター)、乳製品の摂取を抑え、魚、大豆の摂取を増やす。
・野菜、階層、きのこの摂取を増やす。果物やナッツを適度に摂取する。
・精白された穀類(白米、小麦粉)を減らし、未精製穀類(玄米、麦、雑穀)等を増やす。
・食塩を多く含む食品の摂取を控える。
・アルコール摂取を減らす。
〈運動療法〉
・元気であると感じるときにだけ運動する。
・運動は食直後を避け、食前または食後2時間以降で行う。
・運動療法を開始する場合は、いきなり長時間実施するのではなく、まずは「プラステン(今の生活に10分運動時間を加える)」から始める。
・有酸素運動を中心に、1日合計30分以上、週3回以上(可能であれば毎日)、または週150分以上実施することを目標とする。
【まとめ】
今回は脂質異常症について簡単に解説させていただきました。動脈硬化性疾患(心筋梗塞、脳梗塞)の原因となる、非常に重要な生活習慣病の一つですが、原因や治療方法など、患者様それぞれで大きく異なります。健診で異常を指摘された方、検査を受けたことがない方、いつでもお気軽にご相談ください。